2017年11月14日

その他

作家LiLyの箱根を舞台にした書き下ろし小説 「ツグミとわたし」 <後編>

My Hakone Time by 天悠

休日のある日、ひょんなことから学生時代の友達「ツグミ」と2人で

箱根の「天悠」に一泊することになったわたし。

親友でも、恋人でもないけれど、いつも気になる存在だった「ツグミ」とわたしが「天悠」で目にしたものとは?

女性誌での連載や月9ドラマの脚本協力など、オトナ女子の心を捉えた描写が人気の作家LiLyが描く

週末の旅情をくすぐるラブストーリーの後編です。
>>前編はこちらから<<

 

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文・LiLy/イラスト・maegamimami

「ツグミとわたし」後編

『————朝、目覚めたときには想像もしていなかった夜を、迎えていることに気づく瞬間がとても好き』

まさに、今だ・・・・・・。

ツグミが運転するレンタカーの助手席から暗い山道を眺めていると、昼に読んだ作家の言葉が頭の中におりてきて、なんだかとても、不思議な気持ち。

ラジオから流れる女性アナウンサーの声が、さきほど通過したばかりの厚木インターチェンジが混雑している、と伝えている。

カフェでツグミを待っている時にたまたま読んだ、インタビュー記事。その作家と、偶然ツグミは一緒に仕事をしていて、彼女の子どもが急に熱を出したことで、今、私はツグミと箱根に向かっている。

「・・・・・・」。伝えようかと思ったけれど、運転中のツグミの横

顔に視線を向けたところで、口をつぐんだ。

声に出した瞬間に、この不思議さが消えてしまうような気がした。ううん、というよりも、妙な照れから「偶然」という言葉をたくさん使って、自らソレをかき消してしまいそうだった。

————だから、やめた。

「ん? 大丈夫?」

ツグミが、黒目だけを私の方へと流して聞く。

「・・・・・・ん?」・・・・(つづく)

 

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